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中堅アパレルに企画として入社して、はや八年。
アシスタントとしての下積みに全てを費やしてきた私は、無我夢中で仕事に没頭してきた
周りの同期が色恋沙汰に浮かれているのを横目に、私はのしあがってやる、と仕事に全てを捧げてきたのは事実。
しがないサラリーマンの家に産まれた私は故郷を捨て、都内に城を築いた
安い給料は生活費と洋服代に全額消える。
毎月毎月が、ギリギリの生活。
モテたいわけじゃない。
大好きな洋服で着飾って、それが楽しみで働くのが私の生き甲斐で。
男にうつつを抜かしている間に、ライバル達に追い抜かれるのが恐かった。
毎日がキラキラしていた。
入社して初めて任された、付属の釦選び。
見たことのない付属のブックから、見分けのつかない類似の釦を選ばせてもらった
カラーを出して、染め上がってきた釦の色が指示どおりに染まっているかを確認する
――忘れもしない。
きれいなサックスカラーの生地でビーカーを出して、
選んだシェル(貝)の二つ穴の釦がサックス色に染まって紙の上で七色に輝いていた
日付と、自分のサイン。
この選んだ釦が、私の初めてデザインにたずさわった、創造の第一歩。
誰が出しても、同じように上がってくる、そんな単純な事でも、私の全てはそこから始まった
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