ー接近ー

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あれから一週間。 登下校に毎日あの河川敷を歩いたけど、 魔法の足の彼には会うことはなかった。 そうして、毎日、毎日、 同じように時間は流れ…… 今は、土曜日の夕方前。 「お母さーん! ねぇ、室温に戻しておいた卵、知らない?」 ダイニングテーブルに置いたはずの卵を探していた私。 「え? 卵? 知らないわよ。あっ! お父さんがさっき、小腹空いたって卵かけご飯食べていたわよ」 お母さんから、犯人であろう人物の名前を聞き出した私は、リビングのソファで居眠りするお父さんの元へ。 「お父さん! 卵、食べた?」 まだ完全に眠りの中にいる、お父さんをわざと激しく揺すってみる。 「お父さん!」 私はもう一度、大きな声で呼んだ。 「何だ、耳元でうるさい……」 お父さんはいかにも、迷惑そうに目を開けて大きな欠伸を1回した。 「うるさいじゃないよ! た、ま、ご! お父さん。食べちゃった?」 「あぁ……。さっきな、卵かけご飯で食べたぞ。ちょうど良い所に卵が置いてあったから」 「もうっ! 明日、皐月の応援行くんだよ! 持っていくクッキーに使うから室温に戻していたのに!」 これで何回目であろう、犯人の仕業にこれ以上、怒る気も失せる。 私は穿いていたスキニーパンツのポケットに500円を忍ばせ、 「卵、買ってくる」 と言い残し家を出た。
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