結界都市

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恐れを抱く必要はない さっきのはきっと『気に入らなかった』三人を懲らしめるための力の行使だろう だから、それにそれを振るうことは無い、有り得ない だが俺は知っている 女の張り詰めた空気を 殺人をしても簡単に肯定する不遜さを そしてそれを易々と成し遂げるだけの力を…… 思い返しても鳥肌が立つ 「おい?」 「あ……あぁ?」 まずい、機嫌を損なってないか? 考えに浸りすぎて女の言葉に気づけなかった そんな事を考えていた俺は曖昧にしか返事出来なかった 「ほれ、立て」 そう言って、すっと手を差し伸べてくる その時に頭をよぎる ーーーこの手が武器を砕いた 「何をやっとる……」 手をとらずにそれを凝視していた俺に疑問を感じたかのように訝しげに女が言う ヤバい、こんな事を考えていたと知られたら何をされるか……! 相手は『ドラグナー』だ、こちらの常識は通じないに決まっている 不信を与えずに合わせて…… そして見逃してもらおう…… 意を決して俺は女の手を握る 恐る恐るやったら怪しまれかねない ーーーぎゅっ 「早くとらんか、馬鹿者……」 そのまま引っ張られて起き上がらされる ドラグナーの手は柔らかかった 人肌の心地良い温もりもあった…… それは人と変わらない温もりだ ずきっと心が痛む 痛みの正体……それを確認しなければならないような気がした…… 「なぁ、あんた……」 「ん?」 気付けば何故かあんまり明るい表情をしていない女 それに気付かずに俺はそのまま質問を投げ掛ける 「何で……  何であんた、あの時に戦わなかったんだ?」 傭兵三人に執拗に絡まれた時だ あれだけの強さならば、たこ焼きを食べながら片手でも倒せたハズだ あんな絡まれ方をして自分のプライドが許さなかったのだろうか? それが俺にはわからなかった 「あの時、か……」
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