結界都市

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『殺人者』 この言葉が重みを増す 心の中にずしっと重みを持たせ、まるで女が化け物かのような…… そんな認識に考えを囚われるのだ やはり殺人なんて非日常の響きであり、現実に起こるハズの無い出来事なのだと無意識に結論付けたのだろう 命を奪った、殺した その可能性を見せられた時、俺は女を畏怖の対象として捉えていた……! 人を殺した、その力 人を殺せる考え 人を殺しても尚平常心である精神 その全てが俺には…… 「どうするのだ?」 「ーーッ!?」 急に女の言葉が聞こえて俺はハッと女を見た 俺に対する言葉ではない 男三人に対する言葉だ 冷静になればわかったハズだ 「聞いているのか?」 傭兵の残り二人もまた、俺と同じように怯んでいるのだ 男二人から言えば『最悪の相手』に喧嘩を売ったことになる 実際戦った二人もひしひしと『次元』の違いと言うものを感じているだろう 彼らとて戦いを生業とする傭兵、それもBランクともなればプライドを持ってその職に当たっているだろう それを今、完全否定されているのだ 次元の違い…… そうだ、こんなにも違うのだ 俺はこの三人に全く歯が立たなかった 遊びで痛め付けられるほどの違いだ だがこの三人はあの女『ドラグナー』に赤子同然の扱いを受けていた…… 『人とは決定的に違う力を持ち』 ……こんなにも違う存在なのだ 「やるならば面倒だが相手をしてやる」 そして語気を強めて続ける……! 「だがやる気が失せたならばこの男を連れて早く失せろ!」 泡を吹いて気絶している男を指して女は言い放つ! 「く、くそぉ!」 一人はそのまま逃げ出した! 「あ、おい!」 「しっかりと連れていけ、さもなくば追いかけて打ちのめすぞ?」 続けて逃げようとした男を言葉で制して気絶してる男を連れていかせる 「お、おぉぉおぉ、覚えてやがれ!」 やっと振り絞った言葉は負け犬の遠吠えだ それもかなり遠くに行ってからの言葉、それしか言えなかったのだろう…… 「大丈夫か?」 女が目の前に立っている さっきまでのぴりっとした空気はどこへやら、会った頃のどうにも締まらない空気になっていた
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