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「あの、斎藤さん!」
雛が出かけようとする斎藤を呼び止める。
「斎藤さんがいなくなると私、ひとりきりで……その…だから早く帰ってください。ひとりになると嫌なことばかり考えてしまって怖いんです。」
「分かった……。」
「ごめんなさい、わがままなこと言ってしまって……。」
「いや、構わない。」
「じゃあ今度こそいってらっしゃい、斎藤さん。巡察気をつけてください。」
「……ああ、行ってくる。」
斎藤はそう言うと襖を開け巡察へ出かけた。
―――――――
―――――
―――
「斎藤組長、今日は特に何も異常なかったですね。」
隊士の一人が斎藤に話しかける。
「そうだな。」
「そういえばさっき斎藤組長、甘味屋で何買ってたんですか?」
「ちょっとな……。それより早く屯所に帰るぞ。」
「はい!」
斎藤が屯所に戻り、自室の襖を開けようとすると、部屋の中から雛の泣き声が聞こえてきた。
「っ…ひっく…ひっく……沖田さん……。」
斎藤が部屋の襖を開けて部屋の中へ入る。
「斎藤さん……。」
雛が泣きながら斎藤の方を向く。
「泣いていたのか……。」
「………。」
雛が黙る。
斎藤は雛の側に寄り、雛の頭を撫でると雛に言う。
「雛、口を開けてみろ。」
「えっ?」
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