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「……俺は朝餉に行く。後でお前の分の朝餉を部屋に持ってくるからそれまでに着替えておけ。」
「斎藤さん、何から何までありがとうございます。斎藤さんって今日は朝から巡察ですよね?」
「ああ。」
「じゃあ、隊服の用意しておきますね。」
「ああ、すまない。」
斎藤はそう答えると朝餉を食べに大部屋に向かった。
大部屋に行くと、大勢の隊士たちの中、沖田がひとり黙って朝餉を食べていた。
斎藤も膳を持ち沖田の反対側の席に座り朝餉をとりはじめた。
「……ごちそうさま。」
しばらくすると沖田は膳を持ち、斎藤の方を一度も見ずに台所に膳をさげにいってしまった。
「………。」
朝餉をとった後、雛の分の膳を持ち自室に戻ると、雛が嬉しそうに斎藤を迎える。
「斎藤さん!」
「……お前の分の朝餉だ。腹がすいているだろう。早く食べろ。」
「ありがとうございます。」
「俺はこれからすぐ巡察だからおとなしくしていろ。」
斎藤はそう言うと雛の用意した羽織に手をかける。
「あっ、私が……。」
雛は斎藤から羽織を奪うと斎藤に羽織を着せる。
「………。」
「いつも……」
「えっ?」
「いつも総司の羽織もこんな風に着せていたのか?」
「はい……匂い袋の事件の後くらいからずっと……それが私の日課になってました。」
雛が目を伏せて答える。
斎藤はそれを見ると優しい声で雛に言う。
「別に責めているわけではない。それじゃあ、行ってくる。」
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