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『グッ……グガ……ガ……』
――!!!!
奴の呼吸が乱れた。
気の遠くなるほど繰り返し、体得した武術も呼吸が乱れればリズムが狂う。
俺は左下から斜め上へ、グングニルを振り上げた。
ガードする為に差し出されたディアブロの右腕の手甲。その上を剣尖が火花を散らし鋭い金属音を奏でながら滑っていく。
よしっ、うまくいった。
胸元を切り付ける間合いであれば、手甲で止められていた。俺はその手前、あえて攻撃が届かない位置で振り上げたんだ。
ガードの為、少し前傾姿勢になった敵。
上方へ光の帯を引きながら振り上げられたグングニル。
狙うは奴の首筋。
鋭く研ぎ澄まされた穂先の一点には凝縮されたオーラが留められている。
俺は手首を返し得物を振り下ろした。
輝く刃がディアブロを纏(まと)う守りのオーラを切り裂き、鍛え抜かれた肉体にダメージを与えた。
しかし――
さすがは、としか言いようのない動きをディアブロは見せる。
斬られる刹那、首を捻じるように反らし、俺の攻撃が胸元へいくよう被害を最小限に食い止めた。
飛び散る鮮紅色の液体が視界を遮る。
見えなくとも、ディアブロがコマのように体全体を捻じる姿が感覚で理解できた。
回し蹴りがくる。
咄嗟に身をかがめると、俺の後頭部をディアブロの右足が疾風のごとく通り過ぎ、髪を撫でていった。
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