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シャーク・Kという男は、天賦(てんぷ)の才を持っている。
運営最強だとか、本当に笑っちまうよな。
ずっと張り詰めていた気が緩んだのか、全身の力が抜けていくのを感じたので俺はその場で胡坐(あぐら)をかいた。
もう、一歩も動けねぇ。
『…………。』
そんな俺をシャークは一瞥(いちべつ)し、両手で数珠丸を握り締めた。
茫然としていたレイドも動き出す。
『俺は……俺は……
皆殺しのレイドだっ!!』
大地の裂け目を飛び越え、スナッチソードを軽々と振り上げながらレイドはシャークとの間合いを一気に詰めた。
尽きることのない源泉のごとく溢れ出るシャークのオーラ。
スキル戦では勝ち目がないという奴の判断は、正しい。
冷静に考えれば、オーラ量と反応速度以外の各ステータスは未だレイドが上。
それを理解しているから、奴は剣戟勝負を仕掛けたんだ。
だが――
その判断は正しくない。
レイドはまだ気が付いていない。
キャップを外したことや数珠丸がレア度★7になったことよりも、重要なシャークの変化に。
紅蓮のオーラで形成された数珠丸の刀身と冷たく光る黒塗りの刀身がぶつかり合う。
キィンと澄んだ金属音が何度も繰り返される。
その間隔が徐々に短く――
『――――っ!?』
押されているのはレイドだった。
数値では計り知れないシャークの戦闘力。
戦いの英才教育。数多(あまた)の戦闘経験が集約された動き。
違う――。
これらとは違う別次元の動きだ。
最早、仮説でしか語れない。
死に直面した極限状態――それはシャーク本人が無意識にそういった状態に仕向けたのかもしれない――に陥ったことで初めて開花したK遺伝子の賜物(たまもの)なのか。
シャークの中で眠っていたK遺伝子が今、目覚めた。
本当に強くなるのはこれからなんじゃないのか?
仮説をいくら並べても無意味だ。
ただ、事実として。
傍観者となった俺が言えるのは、シャークが勝つということ。
澄んだ金属音が二連続で聞こえた後、ギィンと強く鈍い音が響いた。
鍔迫り合いになった両者は得物越しに睨み合う。
『こ、こんな初期世界で……俺が、俺がっ!!』
叫ぶレイドの黒剣が数珠丸を押していく。
シャークは薄っすらと笑みを浮かべ、こう答えた。
『……貴方との戦い、
面白"かった"ですよ』
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