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品川駅を過ぎてすぐ、車は波止場のような場所へと向かっていた。
予想外のことに柚子は軽く混乱する。
「何よここ、港?」
「ああ。品川埠頭」
「………なんでまた……」
柚子は窓外の景色から証に目を移す。
「クルーザー貸し切ったから」
「…………………」
柚子は意味を計り兼ね、ポカンと証の横顔を見つめた。
「……………は?」
「だから、ナイトクルージングに行くんだよ」
証はちょうどそこで車を停めた。
ハンドブレーキを上げながら、柚子に向き直る。
「言っただろ。お前の誕生日、東京湾に花火打ち上げてやるって」
「………………」
「3月で契約後だっつーから、前倒しで今日にした」
柚子は唖然として口をあんぐり開けた。
何……?
誕生日の前倒し……?
東京湾に花火……?
クルーザーを貸し切り……?
「え……え────っっ!?」
柚子が素っ頓狂な声を上げると、証は煩そうに眉を寄せた。
「うるせーな」
「だ、だって、あれってマジで言ってたの…!?」
「………マジだけど」
当然だろうと言わんばかりに証は頷いた。
クラクラと目眩を覚えて柚子は強くこめかみを押さえる。
(………や、やっぱりスケールが違う……。手作りのケーキ一つにこのお返しって…しかも恋人でもないのに……)
揚げ句の果てに、誕生日の前倒しって、何なんだそれは。
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