第十四章:私は私らしく、華乃の決死の思い

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今、新撰組の中では、近藤と土方を核にした近藤派と、芹沢と新見が仕切る芹沢派とが対立していた。 近藤派が穏和で平和的だとしたら、芹沢派は力で物を言わせる傍若無人の集まりだ。 御上から新撰組の名を授かったからには、これまでの世間評価を改めなければならない。 その為には、芹沢と新見は邪魔でしかないのだ。 「けれど土方さん、やっぱり芹沢先生も殺しちゃうんですか?そりゃあ…前は手に負えない人でしたが、今は華乃さんのお陰もあって、だいぶ大人しくなったことしませんか?」 「そうだが…例え芹沢が良くても新見がいけねぇ。奴は芹沢の名を騙って押し借り等の悪行三昧。おかげで、芹沢の名はあまりに有名になりすぎきた」 もちろん悪い意味で、だ。 もう手遅れなんだと、土方は苦渋の表情で吐き捨てた。 「………手遅れ…です…か」 「…総司、嫌なら無理は言わねぇ。俺が殺る。お前はただ、目を瞑ってくれるだけでいい」 「土方さん…、私は別に…芹沢先生達を斬ることに迷いはないんです。どっちにしろ死ぬと分かってる人なら、いっそ自分の手で終わらせてあげたい…」 けれど…。と、沖田は言葉を詰まらせる。 「華乃さんに嫌われるのは……ちょっと…ちょっとだけ……悲しい…ですねぇ…」 そう困ったように笑う沖田に、土方は掛ける言葉が見つからなかった。 そんな時、部屋の襖をノックする音が聞こえた。 「…誰だ?」 油断した。 (今の話…聞かれてねぇだろうな…) スッと神経を尖らせる土方。すると… 「斎藤です。土方殿、今…宜しいでしょうか?」 聞こえてきた声は馴染みの者だった。 「斎藤くんか…」 (彼なら平気だろう…) 「入っていいぞ」 土方が許可を出すと、「失礼します」と言いながら斎藤が顔を覗かせた。 「……沖田くんもいたのか…」 「こんにちは、斎藤さん」 意表を突かれた様子の斎藤に、沖田はニコッと微笑みかける。 「それで、斎藤くん。用件はなんだ?」 「あ、はい。新見殿を見ておりませんか?」 「新見…?ハッ!どうせ奴のことだ、また島原かどっかにいるんだろ」 土方が鼻で笑って答えると、斎藤は顎に手をあて深刻な顔をした。
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