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今、新撰組の中では、近藤と土方を核にした近藤派と、芹沢と新見が仕切る芹沢派とが対立していた。
近藤派が穏和で平和的だとしたら、芹沢派は力で物を言わせる傍若無人の集まりだ。
御上から新撰組の名を授かったからには、これまでの世間評価を改めなければならない。
その為には、芹沢と新見は邪魔でしかないのだ。
「けれど土方さん、やっぱり芹沢先生も殺しちゃうんですか?そりゃあ…前は手に負えない人でしたが、今は華乃さんのお陰もあって、だいぶ大人しくなったことしませんか?」
「そうだが…例え芹沢が良くても新見がいけねぇ。奴は芹沢の名を騙って押し借り等の悪行三昧。おかげで、芹沢の名はあまりに有名になりすぎきた」
もちろん悪い意味で、だ。
もう手遅れなんだと、土方は苦渋の表情で吐き捨てた。
「………手遅れ…です…か」
「…総司、嫌なら無理は言わねぇ。俺が殺る。お前はただ、目を瞑ってくれるだけでいい」
「土方さん…、私は別に…芹沢先生達を斬ることに迷いはないんです。どっちにしろ死ぬと分かってる人なら、いっそ自分の手で終わらせてあげたい…」
けれど…。と、沖田は言葉を詰まらせる。
「華乃さんに嫌われるのは……ちょっと…ちょっとだけ……悲しい…ですねぇ…」
そう困ったように笑う沖田に、土方は掛ける言葉が見つからなかった。
そんな時、部屋の襖をノックする音が聞こえた。
「…誰だ?」
油断した。
(今の話…聞かれてねぇだろうな…)
スッと神経を尖らせる土方。すると…
「斎藤です。土方殿、今…宜しいでしょうか?」
聞こえてきた声は馴染みの者だった。
「斎藤くんか…」
(彼なら平気だろう…)
「入っていいぞ」
土方が許可を出すと、「失礼します」と言いながら斎藤が顔を覗かせた。
「……沖田くんもいたのか…」
「こんにちは、斎藤さん」
意表を突かれた様子の斎藤に、沖田はニコッと微笑みかける。
「それで、斎藤くん。用件はなんだ?」
「あ、はい。新見殿を見ておりませんか?」
「新見…?ハッ!どうせ奴のことだ、また島原かどっかにいるんだろ」
土方が鼻で笑って答えると、斎藤は顎に手をあて深刻な顔をした。
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