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五十嵐もそれに倣うように少し間を開けて証の横に腰を下ろした。
「………………」
低い場所で鳥が鳴き、二人は同時に空を見上げる。
しばらくぼんやりと空を仰いでいたが、やがて証が沈黙を破った。
「お前……昨日、寝れたか?」
五十嵐は静かに証に目を向けた。
「………いいえ。ほとんど眠れませんでした」
「………だよな。俺も一睡もできなかった」
証は笑いながら、地面に目を伏せた。
「おかげで、たっぷり考える時間はできたけどな……」
「………………」
五十嵐は黙って証の横顔を見つめる。
証は膝の上で手を組み、じっと前方を見据えた。
「考えて……随分と遠回りした気がするけど……やっと自分なりの答、出た」
そこで証はゆっくりと五十嵐に視線を向けた。
「俺やっぱ、あいつ誰にも渡せねーわ」
五十嵐は目を見張り、息を飲んだ。
証は笑ってすぐにまた前を向いた。
「バカだよな。こんな簡単なこと、死ぬ気で考えてやっとわかるなんて」
「………………」
「昨日お前にあいつが好きだって告白されて……辞表も書く覚悟があるって言われて……なんか、頭ぶん殴られた気分だった」
証は真顔になり、小さく肩で息をつく。
「あいつを好きな気持ちは多分、お前にも誰にも負けてねぇ自信はあるのに、お前と俺の違いって何なんだろうって……昨日すげー考えた」
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