第九章

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私はお言葉に甘えて藩邸に戻ることにした。 「蓮くん、久しぶりだね。」 私の目の前に真っ黒な装束に包まれた蓮くんが現れた。 その様子は怒っているように見えた。 「復讐、止めたのか?」 「………分からない。でも、殺した人は必ず見つける。」 見つけたあとのことは今は考えていない。 きっと、今考えても土方さんの時みたいになってしまうから… 蓮くんは興味無さそうに返事をして先を歩いている。 「桂さん、お久しぶりです…」 「朔……なんですね?無事で何よりです。」 桂さんは柔らかい笑みを浮かべて出迎えてくれた。 でも、禁門の変以降長州の活動は制限されている。 それどころか、桂さんはあっちこっち逃げて暮らしているような状況だ。 だから、私が藩邸に戻って会えたなんて凄く運がいい。 「桂さん、私は壬生狼に残ります。それで厚かましいお願い…なんですが……」 「いいじゃねぇか。いつでも帰ってこいよ。朔の家は此処だろ?」 晋兄がいつの間にかいた。 そして、ニッと笑った。 私は晋兄に飛びついた。 「会いたかった……。晋兄…!」 前に来たときはいなかったから。 晋兄は私の頭をポンポン撫でてくれる。
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