ゆく年、くる年 2

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(……わ。ホンマに美味しい) シャンパングラスに注がれた赤のスパークリングワインを口にした千波は、あまりの美味しさに目を輝かせた。 普段あまりワインは口にしないが、友美が絶賛するだけあってまろやかで飲みやすく、とても美味しかった。   クイッと一気にワインを煽った千波を、横に座っていた陸は心配そうに見つめた。 「大丈夫ですか?」 「え? どうしてですか?」 「これ、口当たりいいけど度数結構高いですよ。あまりハイペースで飲まないほうが」 「大丈夫ですよー。この年になったら自分のキャパぐらいわかってますから」 そう言って笑った千波は、もう既に顔も赤くテンションが高めだった。 「………なんかもう既に、酔ってるみたいに見えますけど」 「それはこのワインが美味しいし、雰囲気が楽しいからメートルが上がってるだけですよー」 (………メートル?) 聞き慣れない言葉に首を傾げていると、反対側に座っていた操がクイクイと陸の袖を引いた。 耳元で小声で囁く。 「お酒飲んで機嫌よくなること、メートルが上がるって言うの」 「………へぇ。関西弁?」 「違うけど。でも殆ど死語やね」 それを聞いた陸はなるほど、と妙に納得した。 おばあちゃん子の千波らしい。 とにもかくにも、楽しんでいるようなので何よりだ。  
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