掛け違い 2

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5時の勤務を終え、千波は真っ直ぐに陸の部屋へと向かった。 最後の挨拶をする為である。 陸の部屋の前に立った時には、千波はどこか開き直ったような気持ちになっていた。 「陸様。江崎です、入ってよろしいでしょうか」 ノックをしてからそう声をかけると。 一拍の間の後、どうぞという陸の声が返ってきた。 千波はふうっと息を吐き出してから、思い切ってドアを開けた。 「失礼します」 室内に一歩踏み入れると同時に、陸が椅子から立ち上がった。 千波に向き直り、柔らかい笑みを浮かべる。 その笑顔を見て千波の胸が何故かチクリと小さく痛んだ。 「あの。……陸様とは今日で最後なので、ご挨拶に参りました」 「………そうですね。半年間、ご苦労様でした。お世話になりました」 陸のほうが先に会釈をしたので、千波は慌ててそれに倣って頭を下げた。 「こちらこそ、本当にお世話になりました。……ありがとうございました」 「なんだかすみません、今日が最後だったのに昼まで寝てしまって」 「………………」 どう話を切り出そうかと考えていた千波は、陸のほうから話題を出してきたので驚いて顔を上げた。  
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