掛け違い 2

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目が合うと、陸はニコッと微笑んだ。 千波はギュッとみどりから預かった紙袋を持つ手に力を込める。 「………珍しいから、びっくりしました。……昨夜は、眠れなかったんですか?」 「………………」 冷静を装いながらさりげなく問うと、ほんの一瞬だけ陸の顔が強張ったように見えた。   「………はい。……少し、眠れなくて」 首の後ろに手を置きながら、陸は少し千波から視線を外した。 千波はじっと陸の顔を見上げる。 「…………………」 そのまま陸が昨夜の話をしてくれるのではないかと、千波はしばらく陸の様子を窺っていた。 けれど陸は、それ以上口を開こうとしなかった。 千波は、強く唇を噛み締める。 (………言ってくれへんのや。……昨日のこと、黙ってるつもりなんや) それは、やましいことがあるからなのか。 それとも逆に、何もないからあえて言わなくてもいいと思っているのか。 もう何もかもがわからなくなり、千波は持っていた紙袋をグイッと陸に突き出した。 キッと強い瞳で陸の顔を見上げる。 すると陸は、戸惑ったような表情を浮かべた。 「……………え?」 「────今朝、みどり様からお預かりしました。……昨夜の陸様の忘れ物やそうです」  
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