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一帯の街灯は全て消えており、見えるのはヘッドライトの光と、それに反射する標識だけだった。
そのままバイクを走らせていると、ヘッドライトが照らす範囲よりも前方、数百メートル先の暗闇に突如赤い光が浮かび上がったのが視界に入る。
今のは何だ---
その正体に首を傾げた瞬間、その赤い光が真っ直ぐこちらに向かってきた。
舌打ちしながら身体を大きく左に振り、バイクの進路を強引に変える。
つい先ほどまで自分がいた位置を、燃え盛る炎が一直線に駆け抜けていった。
同時に、バランスを崩すことになり体勢を立て直すことが出来ず、横倒しになったバイクとともにアスファルトの上を猛スピードで滑っていく。
ガリガリと車体と身体が削れる音と痛みに顔をしかめ、法力を解放しようとするが、それよりも先に車線を仕切るガードレールに激しく衝突し、無様に道路を転がる羽目になった。
ようやく身体は止まるも、視界が暗転し思考が全く纏まらない。
痛みを無視して片膝を着くが、そこから立ち上がるための力が出ない。
あれは、あの炎は…
「久しぶりだな、リベリオン」
徐々に視界が回復していく中、その片隅が淡く光っていた。
そちらに目を向ければ、見知った顔の男が両腕を炎に滾らせている。
今の状況にはおよそ場違いにも思えるスーツに身を包んだ男は無表情だが、その言葉に混じるのは嘲るような笑い。
「ジェイド…」
『スレイヤー』の最高戦力の一人が、重々しい足音を響かせて歩み寄ってくる。
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