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「見た目とか、もともと好きだなあって思ってたんだけど……。
毎週『恋パラ』聞いてるとね。ほんとにどんどん好きになって行くの。
この人と一緒にいたい。この人のこと、もっと知りたい、って。
やさしさとか、あったかさとか……すごく感じるの」
「……」
なるほど。
その気持ちは、ものすごく分かる。
私は再びミシンを動かし始めた。
田辺が『恋パラ』担当になってから、水曜日が楽しみだった。
爆笑しながら、時にはじんわり涙ぐみながら、クラスの皆で一緒に田辺のトークを聞いた。
豪快な見た目からは想像もつかないほど、田辺は人の気持ちを分かっている。
それがみんなに伝わるから、男子からも女子からも、愛される存在なのだと思う。
……でも……。
そんな田辺の良さを知っているのが自分だけじゃなかった事を改めて思い知らされると、なんだか……。
これって……ヤキモチ?
「……」
私はぶんぶんと顔を左右に振った。
――断じて、違う!
私の好きな人は相良先輩。
田辺はただのクラスメイトだもん。
――ただの……。
ガチッ!!と弾けるような音がして、再び下糸が切れた。
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