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心と裏腹に、体は正直だ。
枯らしたはずの涙が、これでもかと言うほど悲しみを叫ぶ。
この声は隣の部屋には聞こえない。
だって洗濯機も回ってるし、テレビも音量大きめでついてるし、水道だって出しっぱなしだし。
隣の物音が聞こえないようにとつけた音達が、思いがけずいい仕事をしてくれている。
散々泣いた。
泣いて、泣いて、泣き尽くすと、キッチンの戸棚に寄りかかり、妙に自分が滑稽に思えてきた。
よく考えたらおかしい。
私がここで怒りを感じ、裏切りだと嘆くのはおかしい。
だって私達は恋人じゃない。
私に彼氏がいたことも、時峰に想い人がいることも、お互い全て承知で続けた関係。
声が利用価値だと知らなかったとしても、互いに互いを利用してきた関係だということに変わりはない。
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