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「はぁあ……」
起きてからまだ少ししか経っていないのに、すでに二度目の盛大なため息。
『せっかく憧れの沖田になったのに、乱闘シーンどころか、なんか地味やし嫌な役回りやなぁ』
妾を寝取られた上に、内部抗争のゴタゴタに巻き込まれて殺されましたってか?(然も、殺ったの自分だし……)
『どない伝えたらえぇっての?』
菱屋までの道すがら、そんな考えが頭の中をぐるぐるしていた。
あたしの気持ちを察したのか、同行していた平隊士君が、「私が行って参りましょうか」――と言ってくれた。
彼は、沖田よりは四、五歳年上なのだろう。
けど、現実のあたしよりはうんと若い。
――若い子には甘えられないや。
それに沖田の方が上司なのだ。
やっぱ、あたしがちゃんと行かなきゃ――と思う。
気持ちを引き締めるため、羽織の紐を締め直した。
「いいですよ、中村君。私が行きます。
お梅さんがああいう不幸な事に巻き込まれたのは、我々の責任なんですからね。
きちんと幹部の私から説明しなくては」
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