第二章

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 店先から声をかけた。  朝早くから、店はにぎわっていた。  この店の誰一人として、お梅が死んだことを知らないのだ。 「御免、私、新選組の沖田と申します」  手代に案内され、奥に通される。  客間で出会った菱屋の主人は、ごく平凡な中年男だった。  何といって特徴のない、まぁ強いて挙げるなら髷がひょろりと細い事か。  町人風に結った髷は、髪の少なさを表すかのように貧弱だった。 『まだ、四十代前半といったところかな……』  ――そりゃ、この人と芹沢局長を比べたら芹沢局長の方がよっぽど魅力的や。  お梅を身請けた男を前にして、あたしは失礼な事を思っていた。  沖田の記憶の中で、豪快に笑う芹沢の姿が浮かぶ。  胸にジクリと、鈍痛を感じた。
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