第一章

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 その日に見た夢は、今もよく憶えている。  当時あたしが夢中になっていたケータイ小説のワンシーン。  登場するのは、縁側に腰掛けるひと組の男女。  新選組副長助勤一番隊組長、沖田総司と…… 「なぁ、沖田はん。  うちの我儘聞いてくれはる?」  女が下を向いたまま、沖田に話しかけた。 「はあ、」  沖田は、どこか気のない返事をした。 「あんな、芹沢先生の事なんどすけどな……  もしも、もしもあんさんが芹沢はんを殺すことになってしもうたら、うちも一緒に殺してくれはります?」 「!………」  沖田が息を呑む。  何気なく話された話の重さに、途方に暮れた顔で女の方を見る。  反するように女はゆるりと沖田の方に顔を向けた。 「なんで……お梅さん。……貴女いったい……」 「ふふ、なんてお顔。  せやかて、新見はんのお腹詰めさしたん、あんさんらやろ?  うち、知ってますえ」  沖田はそれ以上何も言えなかった。  きっと彼はこの女を好いていた。  お梅と呼ばれた女が再び下を向き、白いうなじを見せた。     あたしはただ、彼らのやり取りを傍観していただけだ。  お梅は色の白い、ふっくらとした印象の小柄な女だった。平成の女の子たちのような、派手な可愛さは無い。  しかし紅梅の花の如き色香を漂わす美しさ。そこに凛とした強さを感じた。  そして、沖田は……どこか、あたしと似ていた。
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