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改札までお父さんが送ってくるのはわかっている もう少し隠れた所で待っていないと ……バレてしまう 移動した場所は ホームから木枯らしが吹き上げる階段の上 あと数分で俺も凍結する 時計は20時を過ぎた 『帰りは何時ごろ?』 ……茉莉花にメールしたい気分だけど 急かすようで嫌だし…… 茉莉花の事だから、話が半分でも帰って来ちゃいそうだ…… 「……………?!」 あっ!! 茉莉花だ!! シャーベット状の体は思うように動かず…… お父さんに手をふり、鞄をゴソゴソしてる茉莉花の前に立ち塞がるが…… 「ま…………う”っ………」 ……茉莉花……と言う前に、体当たりを食らう 脆くもシャーベットの体は崩れてしまった…… 「やだ!純平?!」 他人だと思い必死に謝りながら、見上げた茉莉花が驚く…… 「帰り、ひとりじゃ寂しいだろ?」 「…………純平」 いつもなら、冷たい茉莉花の手を掴み、包んでやるのに…… ゴメンな…… 手が冷えきってて温めてやれないよ 足もカチカチ…… 「ずっと……待っててくれたんでしょ?」 「いや……そんなでも……今来たばかりだよ」 茉莉花がマフラーを緩め 俺の握りしめた拳を開き…… 自分の首筋に俺の両手を持っていく 「………ひゃっ! 今来たなんて、ウソでしょ?」 肩を竦めながらも 優しく俺を見上げる茉莉花が…… …………体温を分けてくれた
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