甘い時間。

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◇ 「ああああああーちゃん!ベーコン焦げてる!」 落ち込んだまま朝食を作っていると、あまりにもボーッとしていた所為かフライパンから煙が出ていた。 隣にいたキョウが慌てて火を止めた。 「あーちゃん、ベーコン焦がして俺をガンにでもさせる気なの?」 「焦げがガン細胞を作るなんて迷信じゃ」 「じゃあ、どうしたの?あーちゃんが珍しいよ。こんなことするの」 「弘法も筆のあやまりというであろう?」 「ああ。猿も木から落ちるって言うもんね」 「違うのじゃ。弘法も……」 「しようがないよね。あーちゃんみたいなベテランの猿でも落ちちゃうもんね」 「いや、猿じゃなくて…」 起きてきたばかりのタカ兄が「オラウー臭え」とまるであたしの体から獣の臭いが発されてるみたいな言い草をしてきた。 キョウが「あーちゃんが木から落ちたんだから仕方ないよ」と言うと、「ああ。オランウータンも木から落ちるのか」と頷いた。 この兄弟! そんなことで共感しなくていいというのに。 フライパンで叩きたくなった。 寂しさの次はイライラかと、朝から感情の起伏が激しくて疲れるのだ。
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