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トレードマークである赤い装備に身を包んだシャークは前を向いたまま。
肩に担ぐカラフルな傘の先端はこちらを向いている。
この世界きっての最強のプレイヤーの座は、最後まで変わらなかった。
相変わらず何を考えているのかさっぱり分からないけれど、悪い人じゃないことは理解できた。
柚葉は先程のオレ同様に深々と頭を下げている。
『…………。』
光の中へ足を踏み出そうとしたシャークの動きが止まった。
振り返ったその表情は逆光により分からないが、オレ達の後方。遥か先を眺めているようだった。
感傷に浸(ひた)る様なタイプではないのに。
向き直り様にオレとシャークの視線が交差した。
『……"彼"は面白くないので。後はお願いします』
「えっ――!?」
オレの疑問には答えず、
『……エタンセルは面白い世界だといいですね』
と、だけ言い残し、シャークは虹色に光る傘を開き光の中へと消えていった。
「どういう意味だろう?」
オレは哲二に顔を向けた。
「わからない。とにかく次は僕達の番だ。アナウンスを――」
と、哲二の声にかぶせて音声案内が流れ始めた。
≪龍王の楯、確認中……所有者"鷹山蓮"確認。所有者所属チーム確認中……チーム名"美咲とその下僕たち"確認。チームリーダー"西条美咲"確認中……確認中……≫
まだ終わった訳じゃない。
むしろ、エタンセルはここからが始まり。
それでも一つの区切りとして胸に込み上げてくるものがあった。
≪"西条美咲"確認。チームメンバー、滝澤柚葉、神田修司、佐藤哲二、鷹山蓮確認中……≫
万感の想いを胸に、オレ達はエタンセルの門を眺めている。
ふいに美咲の口から声が漏れた。
「――えっ!!!?」
――戦いは、
終わってなどいなかった。
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