カトラスと召喚獣

31/31
544人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
トレードマークである赤い装備に身を包んだシャークは前を向いたまま。 肩に担ぐカラフルな傘の先端はこちらを向いている。 この世界きっての最強のプレイヤーの座は、最後まで変わらなかった。 相変わらず何を考えているのかさっぱり分からないけれど、悪い人じゃないことは理解できた。 柚葉は先程のオレ同様に深々と頭を下げている。 『…………。』 光の中へ足を踏み出そうとしたシャークの動きが止まった。 振り返ったその表情は逆光により分からないが、オレ達の後方。遥か先を眺めているようだった。 感傷に浸(ひた)る様なタイプではないのに。 向き直り様にオレとシャークの視線が交差した。 『……"彼"は面白くないので。後はお願いします』 「えっ――!?」 オレの疑問には答えず、 『……エタンセルは面白い世界だといいですね』 と、だけ言い残し、シャークは虹色に光る傘を開き光の中へと消えていった。 「どういう意味だろう?」 オレは哲二に顔を向けた。 「わからない。とにかく次は僕達の番だ。アナウンスを――」 と、哲二の声にかぶせて音声案内が流れ始めた。 ≪龍王の楯、確認中……所有者"鷹山蓮"確認。所有者所属チーム確認中……チーム名"美咲とその下僕たち"確認。チームリーダー"西条美咲"確認中……確認中……≫ まだ終わった訳じゃない。 むしろ、エタンセルはここからが始まり。 それでも一つの区切りとして胸に込み上げてくるものがあった。 ≪"西条美咲"確認。チームメンバー、滝澤柚葉、神田修司、佐藤哲二、鷹山蓮確認中……≫ 万感の想いを胸に、オレ達はエタンセルの門を眺めている。 ふいに美咲の口から声が漏れた。 「――えっ!!!?」 ――戦いは、    終わってなどいなかった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!