第5章 クールラント一族

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「シンクレア家のお嬢様がご機嫌ななめなのかい?」 ルシエルは、ここの屋敷の主を思い出して、嘆息する。 齢五十になろうという老嬢だ。 「‥‥あたしが、悪いんです。 あたしの頭の悪いのがいけないんです‥‥。」 少女の言葉には田舎訛りがある。 「何があったの?」 「お金が、合わなくて。 それを執事のジェラルド様に指摘されて。 私、今日、請求書のお支払いに商店をまわったんですけれど‥‥。 ちょっとしたお使いもできないの?』ってお嬢様がそれはそれはお怒りになって。」 「そう。でも、ひどいな。顔を叩くなんて。 それに、こんな時間に家を追い出すことはないよね。 もう暗くなるし、最近は物騒だしね。」 小間使いは声をあげて泣き始める。 「あたし‥‥あたしには小間使いなんて無理なんです。 字も読めないし。計算も習ったことないし‥‥。 こちらに働き口があるってきいたときも、てっきり、下女か、したっぱの料理女だと思ってたので。 あたし、力仕事には自信あるのに‥‥お行儀も口のききかたも出来てないって、毎日怒られてばっかりで。 しゃべりかたも、田舎臭くてみっともないって‥‥。」
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