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(序)
…今でも出張で夜行バスに乗った時など、奈津美は子どもの頃のあの夏の夜を思い出す。
…思い出してはいけないような、それなのに懐かしくて堪らなくなる記憶…
夜行バスの窮屈なシートや走行音や振動やにおいや…そういったすべてが苦くて甘い記憶を呼び覚ます…
カーテンで仕切られただけの夜行バスの個室空間で旅の疲れに身をゆだねてシートに横たわっていると、いつしか奈津美の意識は夢と現の隙間へといざなわれて行く…
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