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「月ちゃん、前科があるからなぁ……」
智樹と付き合っていたのに、福田くんと浮気したという前科なんだろうな……。
彬と付き合うって決めて、まだ数日。
以前の関係を思うと、私を信用できないのは、仕方ないことなのかもしれないけど……。
さみしい……。
これから、ちゃんと信頼関係を築いていかなきゃ。
私は、私の頭に乗っていた大きな手を掴んで、胸まで下ろして両手で握る。
「しっかり掴まえといて。私のこと」
彬の顔を見上げると、眉間のしわが少し、消えた。
私が両手で包んでいる彬の利き手の左手。
彬はもう片方の右手で、私の後頭部をそっと支える。
彬の影に隠れたまま。
周りから死角になっているこの狭いスペースで、静かに、唇を合わせた。
たっぷり彬を感じてからゆっくりと離して、
至近距離で、見つめ合う。
「ここに縛り付けておきたいんだけど……」
はぁ……とため息をついてから、彬は言った。
「マネと付き合ってるやつって、みんなそんな感じなんかな。
俺以外と話すなとか。
俺以外に笑いかけるなとか。
俺、自分がこんなに心が狭いとは思わなかったな」
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