ギュッ

11/34
817人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
「月ちゃん、前科があるからなぁ……」 智樹と付き合っていたのに、福田くんと浮気したという前科なんだろうな……。 彬と付き合うって決めて、まだ数日。 以前の関係を思うと、私を信用できないのは、仕方ないことなのかもしれないけど……。 さみしい……。 これから、ちゃんと信頼関係を築いていかなきゃ。 私は、私の頭に乗っていた大きな手を掴んで、胸まで下ろして両手で握る。 「しっかり掴まえといて。私のこと」 彬の顔を見上げると、眉間のしわが少し、消えた。 私が両手で包んでいる彬の利き手の左手。 彬はもう片方の右手で、私の後頭部をそっと支える。 彬の影に隠れたまま。 周りから死角になっているこの狭いスペースで、静かに、唇を合わせた。 たっぷり彬を感じてからゆっくりと離して、 至近距離で、見つめ合う。 「ここに縛り付けておきたいんだけど……」 はぁ……とため息をついてから、彬は言った。 「マネと付き合ってるやつって、みんなそんな感じなんかな。 俺以外と話すなとか。 俺以外に笑いかけるなとか。 俺、自分がこんなに心が狭いとは思わなかったな」
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!