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もし、あたしがここで別れを切り出したら、タカヤはあたしを引き止めたりしないだろう。
一緒にいても辛いだけなら、離れた方がいいのかもしれない。
そうすれば、あたしはタカヤの仕事の邪魔をせずに済むのだ。
……でも。
本当にそれでいいのだろうか。
諦めてしまって後悔しないだろうか。
頭の中で何度も同じ問いが行き来するけれど、答えは直ぐに出せそうにもない。
「あたしと約束したこと、覚えてる?」
「……ああ」
「忘れてたわけじゃないんだ」
じゃ、どうして連絡をくれなかったのだろう。
「あたし、タカヤからの電話を毎日馬鹿みたいに待っていたの」
そう言って、泣きながら笑ってしまった。
本当に、バカみたいだった。
ベッドに入っても気になってなかなか眠れなくて。
睡眠不足の毎日で。
それでも、文句の一つも言わなかったのは、タカヤを信じると決めたからだ。
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