8

22/25
10490人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
     もし、あたしがここで別れを切り出したら、タカヤはあたしを引き止めたりしないだろう。 一緒にいても辛いだけなら、離れた方がいいのかもしれない。 そうすれば、あたしはタカヤの仕事の邪魔をせずに済むのだ。 ……でも。 本当にそれでいいのだろうか。 諦めてしまって後悔しないだろうか。 頭の中で何度も同じ問いが行き来するけれど、答えは直ぐに出せそうにもない。 「あたしと約束したこと、覚えてる?」 「……ああ」 「忘れてたわけじゃないんだ」 じゃ、どうして連絡をくれなかったのだろう。 「あたし、タカヤからの電話を毎日馬鹿みたいに待っていたの」 そう言って、泣きながら笑ってしまった。 本当に、バカみたいだった。 ベッドに入っても気になってなかなか眠れなくて。 睡眠不足の毎日で。 それでも、文句の一つも言わなかったのは、タカヤを信じると決めたからだ。
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!