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青木チームにポイントが入り、会場が一気に湧いた。
砂だらけの青木とハイタッチをした直後、アナウンスが入り同時に振り返る。
『チーム「ウルフルズ」の水城・矢嶋ペアとチーム「ブルーウッド」の青木・小出ペア、ラリーの応酬に会場も盛り上がってまいりました! ここで緊急報告です、Bブロック決勝進出済みのチーム「カラーズ」が体調不良の為、棄権』
「えっ」
青木が声を上げ、お互い顔を見合わせる。という事は。
『只今の試合がブロック優勝決定戦となります』
うおおマジかぁと声をあげた青木の肩を掴み、気合を入れていくぞと声を掛ける。
相手コートも同じように士気を高めている様子が見えた。背の低い方がピョンピョンと仔兎の如く飛び跳ねている。背の高い男と視線が噛み合い、お互い目力で応戦する。可愛い仔兎には申し訳ないが、手加減抜きで打ち負かす。
「青木チームファイト〜」
青木の想い人からの声援が聞こえ、省吾の職場面子が集まる一角へ再び視線をむけると、今度は省吾の姿を見つけた。
(省吾が、見てる)
伊勢の隣に立ち、じっとこちらを睨みつけるように見つめている。試合を見てくれている。こんな事になってなければ、両手を振って、名前を呼んで……。
「あっハル、香取いるよあそこ! 香取ー頑張るから応援してー!」
俺が今望む全てをさらっと一通りやり切った隣の男に殺意が芽生える。ブンブンと両手を振りながら声援に応える青木を一瞥したあと、気を取り直してポジションについた。
試合は始まったばかりだ。それにこの後の試合の事も考えると、出来る限りスタミナも残したい。
「青木」
「はいっ! ごめんなさい!」
直立するなり何故か謝罪する青木を見据え、一言声をかけた。
「素人にラリーは体力の消耗が激しい。出来る限りサーブで点を取っていこう。お前のサーブは切れも良いしパワーもある。頼むぞ」
「わ、俺いまハルにかなり褒められた!? よーし頑張るぞー!」
褒められて延びるタイプのようだ。
会場アナウンスも終了し、試合開始のホイッスルが鳴り響く。
(青木とのチームプレイもなかなか良い。いける)
俺はふうと息をつき、サーブ体勢に入った。
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