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いつもの朝。
いつもの電車。
いつものコンビニで、パンといつものカフェオレを買い、
いつもの席に着く。
だけど、私には予感があった。
今日はきっと、いつもと違う事が起きるんだと。
「篠村さん」
4年後輩の、樫くんこと樫本紅平の声が聞こえたのと、期間限定プレミアムクリームパンの最後の一口を飲み込んだのは、ほぼ同時だった。
「上原さんが、席まで来てくれ、ですって」
何故かニヤニヤ顏の樫くん。
このお調子者の、面白がるような表情にいつもならゲンナリするところだが、今日の私は違った。
「うん、分かった」
カフェオレの残りをストローで吸い、パンの袋と一緒にデスク脇のゴミ箱に放り込んだ。
私が部長席の前に立つと、上原さんは一瞬キーボードを叩くのを止め、私をちらと見上げた。
「それ、総務に手配してもらっといたから」
再びキーボードを叩く音。
それと言われても…と机上に視線を落とすと、小さな紙の袋が目についた。
新幹線の写真と、鉄道会社のロゴ。
開けると、2枚1セットの新幹線のチケット。
日付は、今週の金曜日。
ああ、ついにまた始まるんだ。
金曜日が、待ち遠しくも大変な、あの日々が。
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