あたしを縛る甘い鎖

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「…………………………」 明里は聴いていられなくなって、そっと歩き寝室へ踏み入った。 鍵盤に向かっていた響が顔を上げ、一瞬だけ目があったが無視して彼の足元に座る。 それは明里の幼い頃からの癖だった。 近くで寝そべっていたアモロッソがのそのそと近寄って、隣で丸まり明里の足の甲に顎を乗せた。 手を止めた響が、上から見下ろすように明里を見る。 ふわっと笑んで、 「ただいま、アニ。体調はどう?」 手を下ろし首をくすぐりなから問うた。 それが何となく恥ずかしくて、ふいっと顔をそらすと、響はクスクスと笑う。 「おかえりは言ってくれないんだね。 ねぇ、アニ、言ってよ。君の可愛い声、聞かせて?」 甘い声で言われれば、それだけで身体の奥が痺れて鳴り止まない動悸でどうにかなりそうなのに。
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