~夏の泡沫~(番外編)

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そんなことばかり考えながら川土手を走る。 川の水面が眩しい。 太陽が熱くて汗が噴き出してくる。 けれど、そんなことに構ってる余裕はなかった。 石垣を曲がる。 その先に大きな門。 「ただいま!」 ありったけの声を張り上げる。 「おかえり、大ちゃん」 しゃがれた声。 「おかえり、大君!」 心地よい彼女の声。 太陽だって叶わない彼女の笑顔。 飛びつかれて、重たいリュックにバランスを壊し、二人して倒れ込む。 去年より、伸びた彼女の髪が鼻をくすぐる。 まなは1年生になったのだと自慢した。 一緒に宿題をし、一緒に遊ぶ。 セミは泣きわめき、夏らしさを演出する。 遠くには積乱雲が立ちこめ、雷鳴が遠く聞こえる。 太陽は輝き、月はその光を受ける。
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