第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

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 その頃はまだ、レイラはアイドルをやっていなかったし、メイ姉も英雄の娘ってだけでそんなに顔を知られていたわけじゃなかった。  きっと、それがゼクセルおじきの娘で、後で報復されるなんて考えてもいなかったんだろう。おまけにゼクセルのおじきは結婚記念日の旅行でいなくて、俺たちはとにかく逃げ回った。 『知らないよあんたなんか! 入ってくんじゃないよ! 追われてる? 勝手に野垂れ死になよ……むしろ好都合だわ』  助けを求めたりもしたが、全員こぞって俺たちの顔をみるや否や門前払い。食べるものもなくて、助けを乞うにも誰も手を差し伸べてくれなくて、俺たちは追われながらひたすら逃げた。  エクスプロージョンを街中でぶっ放すくらい過激な連中だったせいか、警察が出動しようがお構いなしだった。警察に頼ろうとすれば、その警察も殺され、俺たちは追いかけまわされた。  きっと、アキトの力を手に入れれば後はどうにでもなると思っていたのだろう。それこそ世界を征服することだってきっとできるくらいだと。  思えば、ゼクセルのおじきたちがその地域を離れて旅行しているその日をあえて狙ったのかもしれない。ゼクセルのおじきさえ出てこなければ、大きな脅威ではないと判断したから。 『兄さん? 大丈夫?』 『ああ……大丈夫だ。平気……だよ』 『トキア君、動かないで……今手当てするから』  そして、結局俺が一番足を引っ張っていた。親父に任されたのに、身体が弱いせいで逃げるにしてもまともに逃げられず、相手の攻撃を受けて、まともに歩けなくなっていた。 『ここなら……暫くは大丈夫だろ。誰にも被害は受けないだろうし』  街の中でも遠慮なしにあいつらは暴れまわった。街の人間は誰も助けてくれず、誰かに頼ろうとすればその人たちは殺され、結果、俺たちは人のいない森林の中へと逃げ込むのが一番身を隠すのに最善だった。 『…………なんでこんなことに』  アキトは酷く落ちこんでいた。  それも当然で、助けを求めた相手全員に邪険に扱われ、なんなら殺されてくれた方がいいとまで言う奴もいたからだ。助けを求めたせいで殺されて、それを全て俺たちのせいにもしてた。  そして、助けようとしてくれた人たちも徐々に邪魔者扱いし始めて……負の連鎖が始まった。  いや、ずっと続いていたのが、より酷くなったの間違いか?
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