第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

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 ある奴は、アキトという驚異を取り除くために。  ある奴は、アキトという人類にとって驚異的な力を持った一般人を研究し、更なる人類の進化を図り、軍事兵器へと仕立てあげるために。  ある奴は、アキトの力をエネルギーへと変換し、新たな資源として利用しようとした。 『どうしてアッ君が狙われるの? 普通、狙うなら私かレイラじゃ……?』 『むしろメイ姉とレイラはゼクセルおじきの娘って誰もが知ってる分、手が出しにくいんだろうが……アキトと、俺は違う。世間的にはとんでもない力を持ったどこぞのガキなんだよ』  あの日の夜、俺の家は一瞬にして灰になった。  単純な話だ。アキトを実験材料にしようとした奴らが、どうせ全力の魔法を打ち込んでもアキトは生きていると踏んで遠慮なしにエクスプロージョンをぶち込んできたんだ。  奴らの算段ではアキト以外の家族は全員消し炭になって、残ったアキトを何らかの方法で捕らえようとしていたいたんだろう。  実を言うと……結構やばかったりした。たまたまゼクセルのおじきとルクおばさんが旅行に行ってるとかで、メイ姉とレイラが家に泊まりにも来てたし、俺なんかそんなものを喰らえば一撃で死ぬ。  親父が死ぬ寸前に自動的に発動する未来予知の力があったおかげで、ギリギリ俺たちは親父に結界で助けられたが……そのあとがやばかった。  今思えば、アキトのことを前々から捕らえようとよほど調べていたんだと思う。  なんとか初撃を耐えた俺たちは親父に連れられて逃げようとしたが、アキトを捕らえようと用意していた道具で、親父とおふくろは捕まっちまったんだ。  そしてそれは、あの親父とおふくろでも抜け出せないほどの力を持った装置だった。  親父とおふくろの正体まで、奴らは知らなかったのか、相当正体を知って驚いていたよ。でも、そいつらは英雄二人の息子だからってターゲットから外そうなんて考えは起こさなかった。  むしろ、英雄二人の身体も手に入ったと喜んでいたよ。そりゃそうだ。人を拉致して実験体にしようとしているような連中だ。死んだことになっている人間を捕まえて、逃がすなんて考えるはずがない。  残された俺たちは、親父たちの指示に従って必死になって逃げだした。狙いがアキトなのは、俺もすぐに気付いたからだ。  親父がアキトを頼むと訴えるかのような視線を向けてきたのを、今でも覚えてる。
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