第十ニ章 さようならで終わる 俺の物語

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『ほら、こういう時こそ明るい顔で前向きな気持ちになるのが大事だろ? な? そりゃ糞みたいなやつも多いけどさ、わかってくれる人はたくさんいんだからさ、な?』 『うん。私アッキー大好きだよ。今追われてるのだって、アッキーのせいじゃないし』 『トキア君いいこと言うじゃない。そうだよアッ君? 今を乗り越えれば、きっといつここのことことも笑い話に出来る日が来るよ』  俺たちは必死だった。それでも、きっと何とかなる、何とかしてみせるって前向きの気持ちでいた。  折角、全てが上手くいこうとしてた矢先の出来事に、アキトはショックを受けていたが、俺はそれでも……何度でもやり直せるって思ってた。 『お前ってさ……夢とかあるのか? 将来やってみたい事とか、なりたいものとかさ』  だから、アキトに聞いてみたんだ。いつかその夢を叶えてやれるように頑張ろうって。 『普通に……皆と一緒に暮らしたい』  心の底から放たれたその言葉を聞いて、俺も、レイラも、メイ姉も、アキトを抱きしめずにはいられなかった。  そんなのが夢であっていいのかと、俺は世間がアキトに向ける目を恨んだ。  同時に、必ず叶えてやるって思った。だって、それくらいの夢を叶えられずに終わる人生なんて、悲しすぎるだろ? そんなの、あってはならないと思ったから。  でも、その夢は叶えられる前に終わっちまった。 『おとなしくしろ……死にたくないだろ?』  結局、子供の俺たちだけじゃあ逃げ切ることは叶わなかった。  俺がもっと強い身体で生まれていれば、結果はもっと違ったのかもしれない。 『ほら、暴れるなアキト君? 君が暴れれば君のお父さんも、ここにいる君の大切なお友達も……皆死ぬことになるよ?』  アキトでも、理解していたのだろう。そこで捕まれば、死んだ方がマシだと思えるような展開が待っていると。自分の力を悪用され、親父やおふくろも俺もレイラもメイ姉もそいつらに非道を受けたあげく、誰も結局助からないと。  絶対絶命の状況に追い込まれ、周りの人間は誰も助けてくれず、俺たちを人質にとられ……人間というものに失望してしまったのか、はたまた滅ぼさなきゃいけないと思ってしまったのか――、  アキトはプッツンしちまった。
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