第一章 「ごめん」と言われても困ります……

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「……ごめん……」 「……」 「……ごめん……」 「……」 「……ごめん……。……本当にごめん――――」  『ごめん』というのは、どういうことなのだろうか。  (ソウ)は、一体、何を……、何に対して謝っているというのだろうか?  蒼の言葉に対する疑問は、いくら考えても消えそうにない。 「……私のこと、嫌いになったん?」 「嫌いじゃない……」  項垂(うなだ)れるようにして頭を下げ、首を横に降っている蒼を見る。 「……じゃあ、何で?」 「……ごめん……。本当にごめん…………」 「……私、阿呆(あほ)やから『……ごめん』だけじゃ、蒼の気持ちが全然分からへんねん。まずは、どういうことか、私にも分かるように説明してくれへん?」 「……」 「……なんで、黙ってしまうん?」 「……ごめん……」  かれこれ1時間近くは、このやり取りが繰り返されたのではないだろうか……?  『ごめん』と沈黙のみの相手に、どう会話を繋げたら良いのか……。  誰か良い方法があったら、教えて欲しい。  いつもだったら、 『そっかぁー。私には何のことかさっぱり分からへんけど、蒼は私に謝りたいことがあったんやね!……ま、なんやメッチャ言いにくそうやし聞かんといてあげるわ!』 と流すことも出来たし、笑って流したと思う。  心の中で多少のもやもやは残るにせよ、蒼が話したく無い内容を無理矢理聞き出そうとする程、私はデリカシーの無い人間ではない、からだ。  だけど……。  だけど……。  それでも。  やっぱり、私にも譲れないものがある。 (これだけは、流したらあかん……)  頭の中で、警鐘が鳴り響いた。  蒼が、約1時間前に、私に言った言葉――――。 『もう一緒には居られない』  これだけは……。  到底、受け入れられない言葉だったから――――。
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