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「……ちょっとなに言ってるか分かんないけど、それは私褒められたのかな?」
「どう捉えようとも君の勝手だけれども、結局のところ僕に何の用なわけ?」
「ああ、うん。そうだった。櫻井君のあまりにも乏しいコミュニケーション能力に驚いてすっかり忘れていたよ。実は君をスカウトに来たのよ」
平野さんはニヤリと笑いながらえらく悪そうな顔をする。この人絶対あれだ、性格悪い。見た目可愛い奴は基本性格悪い。
「……スカウト?」
スカウト。
才能ある人間を自らが所属するグループへと勧誘するようなことをいう。ヘッドハンティングとはまた別なのかな。
ていうかスカウトってことはあれか。どっかの運動系の部活のマネージャーかなんかかな。
でも僕別に何かのスポーツが特別ずば抜けて得意というわけではないし、つまりスカウトされる覚えはまるでない。
「そう。君の実力を見込んでね」
「いやまあ確かに僕は本気を出せばそこそこ何でも出来る可能性を持ち合わせているけど、それで結局何の部活なわけ?」
「……とりあえず放課後迎えに来るね」
「ちょっと待ってまだ行くとは行ってない。なんの部活かを明らかにしてくれ。あれかな、野球部? 駄目だよ僕、小学生の時の少年野球チームでは外野の穴場と呼ばれていたし、過去に一度僕がアウトになりすぎて僕のバッティングの順番が回ってきた瞬間に相手チームのピッチャー以外がベンチに戻り始めたことすらある僕だよ?」
「その回は」
「結局三振スリーアウトチェンジだったよ。だからなに? 野球は無理だよ、唯一出来たのはバントだけだし」
「心配しないで。わたしは別に野球部へのスカウトじゃないので」
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