6人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「リン」
か細い声で呼びかけると、「ママ」と足元まで寄ってきて「抱っこ」と両手を広げた。
その小さな身体をギュッと抱きしめながら、もう一度呼ぶ。
「リン」
私の娘の名前。
誰よりも愛しく、世界で一番大切な人。
「ママ、ママ」
「ごめんね、リン」
リンの背中を撫でようとした時、右手に握りしめていた携帯が床に音を立てて落ちた。
ああ、私。
今まで何をしていたんだろう。
ピロリンとゲーム特有の機械音が、小さな機器から流れる。
祐一君。
それは、私の中では確かに存在していた『存在』
彼はどこにいたのだっけ。
そうだ、携帯の中。
最初のコメントを投稿しよう!