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モデル兼アドバイザーに古くからの友人の籐黄を起用しており、今回は来年の春夏コレクションのパンフレット撮影の打ち合わせだった。
『届いてる。ま、この送信時間を見て予想はしてたけどな』
「何が?」
『お前が寝起きで電話に出る事。籐黄の店に居るから、さっさと来いよ』
籐黄の店まではここから一時間も掛からない。
柳との通話を切り、ソファーの横にある机の上に投げ出してあった眼鏡を掛ける。
さっきよりもはっきりと見える時計の秒針は、忙しなく時を刻んでいる。
「――寒い」
暖房が切れ、一人きりの事務所はやたらと冷える。
恋人――藍澤莉奈(あいざわ りな)が桃矢の元から去ってから、事務所に寝泊まりする事が増えた。
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