【旋 律】前編 第八章

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  田中は楓の空になった弁当箱を見て、「くそぉ」と声を上げた。 「本当に一口もくれなかったな。珍しくムキになりやがって」 彼の言葉に楓は、戸惑いを感じながらも「まあな」と笑みを見せた。 「それにしても、この豪華な弁当を作った女友達もかわいいのか。……いいなぁ」 羨ましそうに呟く田中に、楓は思わず笑った。 そう、確かにかわいい人だ。 でも彼女のかわいさは、田中が思うかわいさとは違うだろう。 『かわいい人だよ、でも14歳も年上だけど』 そう言ったらきっと目を丸くするだろうな。 楓はそんなことを思い、また笑みを浮かべた。  
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