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「私は楓君にいっぱい色んなことを教わっている。
でも私も今、楓君に教えてあげられることがあるのよ」
唐突にそう切り出した円香に、楓はキョトンとしつつ頷いた。
「それはね、女心についてよ」
いたずらな笑みを浮かべそう言った円香に、楓はクスリと笑った。
「ああ、それは確かに……管轄外ですね」
「でしょう?
女はね、いくつになっても、女の子でいたいのよ。
二十代になっても、三十代になっても、四十代になっても女の子でいたいのよ。
いつでも愛情表現されたいし、放っておかれるのは嫌だし、子供を生んで歳をとって、世間からオバサンといわれるようになっても、愛する人だけにはオバサン扱いしてもらいたくないの」
遠くを見ながらそう話す円香の横顔を見詰めながら、楓は黙って聞いていた。
「そしてね、誕生日には誰よりも祝ってもらいたいし、二人の記念日はちゃんと覚えていて……忘れた振りをしてても、ちゃんと覚えてて……
そんなの面倒だと思っていても、ちゃんと付き合ってくれて、なるべく早く帰って来て……記念日を……」
そこまで話したとき、円香の目から涙が零れた。
「円香さん……」
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