【旋 律】前編 最終章

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  心臓が激しく音を立てていた。 「今の僕はあなたも亜美ちゃんも守ることが出来ます」 そう言って抱き締めた腕に力をこめた楓に、円香は慌てて振り返り視線を合わせた。 「か、楓君、何を血迷ってるの?」 動揺に声を震わせながらそう言った円香に、楓は眉をひそめた。 「血迷ってませんよ。僕はずっと思ってきました。 14年前のあなたよりも心惹かれる人が現れたら、今度は絶対に遠慮はしないと、ずっと思ってきたんです」 「楓君……」 強い眼差しを向ける楓の姿に、円香の目に涙が浮かんだ。  
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