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「円香」
楓はそう言って、涙を流し続ける円香をそっと自分の胸に優しく抱き寄せた。
「……楓くん」
かつて、このベンチで背中を貸してくれた少年。
―――今は、何のためらいもなく、あなたの胸で泣くことができる。
「ごめんなさい。
私、もう子供のことは言わないわ」
そう言って涙を拭った円香に、
「謝らないで、僕のことを思ってくれてのことだって、ちゃんと分かってるから。
でももう、そんな心配はしないで欲しい」
楓はそう言って優しく円香の額にキスをした。
額に触れる柔らかな唇に、そのぬくもりに、胸に迫るような愛しさに、目眩を覚えた。
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