【旋 律】後編 第十二章

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  「円香」 楓はそう言って、涙を流し続ける円香をそっと自分の胸に優しく抱き寄せた。 「……楓くん」 かつて、このベンチで背中を貸してくれた少年。 ―――今は、何のためらいもなく、あなたの胸で泣くことができる。 「ごめんなさい。 私、もう子供のことは言わないわ」 そう言って涙を拭った円香に、 「謝らないで、僕のことを思ってくれてのことだって、ちゃんと分かってるから。 でももう、そんな心配はしないで欲しい」 楓はそう言って優しく円香の額にキスをした。 額に触れる柔らかな唇に、そのぬくもりに、胸に迫るような愛しさに、目眩を覚えた。  
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