第6話

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落ち葉が、ハラハラと舞い落ちる。 受験の日、まだ沢山残っていた葉もほとんどが舞ってしまった。 訪れる冬に太陽の光は力を失い、人々はコートに身を包む、そんな季節。 「恭、おめでとう!」 「シオ、こんなの誰だって受かるんだから」 苦笑する恭にそれでも詩織は笑いかける。 「でも、おめでとう!」 まだ、大学から知らせは来ていない。 だけど分かるのは『大河内』だから。 直に連絡があるわけではないけれど。 気にしてくれる人が誰かに相談し、相談された人がまた誰かに。 政財界とはそう言うもの。 誰かと誰かが繋がっている。 その誰かが『大河内』に知らせてくれたのだ。 「明日には入学手続きの資料が送られてきますよ」 そんな鈴花の声に恭はさらに苦い笑いを浮かべた。 「今夜はお祝いしようね? 恭、何が食べたい?」 「シオは何がいい?」 「恭のお祝いなんだってば!」 口を尖らせる詩織に恭はふんわり笑う。 「だから、シオの好きなものでいいよ」 「もうっ! 恭はいっつもそれなんだから!」 頬を紅葉させながら唇を尖らせる詩織に恭は笑う。 きっと、 これは嵐の前の静けさ。
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