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部屋にお通しして、コーヒーを用意する。
多分、榊さんを一人指名だったから二つでいいよね?
・・・・・・あぁ、こんな簡単なことも確認してなかったなんて。
馬鹿すぎる。
ドアを小さくノックして、「失礼します」と小さな声で中を伺えばやっぱり見える人は二人でホッと息をつく。
応接室の中ではもう榊さんと高橋常務の楽しそうな声。
あの甘ったるい笑顔が見える。
あたしは敢えてそれを見ないように視線をそらしながらコーヒーをテーブルに置いた。
「君が稲森さん?」
いきなりの高橋常務の声に「はい」と答えると彼は「そうか」と言って笑うだけ。
何の確認なのか、分からず首をかしげると隣からクスリと笑う声。
「あ、あの・・・・・・?」
「いや、なんでもない。コーヒーありがとう、もう下がっていいから」
向けられる甘ったるい笑顔にカッとのぼせそうになって――。
「し、失礼しましたっ」
慌てて頭を下げてあたしは逃げるように応接室のドアを閉めた。
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