特別な花

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「ストーカーね」 「間違いなくストーカーだな」 「・・・・・・」 なんてほくそ笑みながらの二人の会話には軽く殺意を覚える。 「でも、そんだけ本気ってことなんでしょ?」 まともに答える必要なんて無いけど、 「そうだよ」 と吐き捨てるように言えば、 「よかった」 と、三崎はニコリと笑った。 「こんな拓海初めてね。なんかいいもの見ちゃった」 「見世物じゃないぞ」 「もう隙なんて見せないでよね」 「・・・・・・はっ?何を――」 言いたいのか。 俺の声は三崎が投げ入れる空き缶の音にかき消されて。 「じゃ、お先」 三崎はヒールを鳴らしながら廊下を歩いていった。 なんだ?今の――。 唖然とする俺の後ろでため息がひとつ。 そして、 「これで三崎も開放されるわけだ」 そんな松岡の声に振り返るとまた空き缶が音を立ててゴミ箱に。 甲高い音が嫌に頭に響く。 ――こんなとき、なんて言えばいいんだ? 「・・・・・・なぁ、松岡」 「どっちもどっち。お前も三崎を利用して三崎もそれでよかったわけで」 「・・・・・・・」 「だから、謝ったりするなよ?」 松岡はそう言うと少し苦い笑いを浮かべて。 「早く行けよ、ストーカー」 俺の脚を軽く蹴ると三崎の消えた方向に歩いて行った。 「・・・・・・だよな」 そう口にして苦笑する。 松岡の言うとおり、謝ったりなんて出来るはずがない。 だから俺も奴等とは違う方向に歩き始めた。
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