高嶺の花の咲かせ方

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その夜、俺は上海への『異動』と、彼女を置いていくことを告げた。  酷くぎこちない夜。奈々美から『一緒に行きたい』なんて言葉を期待してたのか? 自分からは言い出せないくせに、なんて身勝手な妄想だろう。   でも、上海に連れて行って高木のようになったら……。 それなら今の関係を続けるほうがいいんじゃないか?  とか、いずれまた本社に戻る日が来るだろうからそのときでも遅くないんじゃないか、とか。 東京と上海は飛行機で3時間。 たった3時間なのだから。  自分にそう言い聞かせて俺は毎日仕事に没頭した。 引越しの準備はほとんど奈々美がやってくれてたから、俺は業者に手配するだけ。 電話でもメールでも、俺は彼女に「ありがとう」と伝えるだけで、それ以上の事は言わなかった。 同じように彼女も触れてこない。 家に帰って彼女の残り香を探す。 異動の話をしてから彼女は毎日ここに来てパッキングをしてくれてるから。けれど、彼女が残したものなんて何もない。 彼女が自分で持ってきた化粧品なんかもすべて綺麗になくなってた。 自分でそうするように仕向けたくせにもう後悔してる。今からでも間に合うんじゃないか? と思っては俺はため息をついた。 そんな毎日。
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