6月

2/8
86人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
あれから、何度か藍倉先輩と登下校した。 俺は何を話して良いかわからずに無言。先輩もうつむいて歩くだけ。 でも、それだけで安らげた。先輩も、特に避けていないから嫌ではないと思う。 「今日も雨よ。傘持った?」 「ああ。ちゃんと持ったよ。行ってきます。」 鞄の中の傘を確認し、学校へ向かう。今日も折り畳み傘は2本入っている。 何故2本入れているかって?それは放課後に使うからさ。 授業が終わり放課後。天気予報は今日も良い仕事をしたようだ。 予報は当たり、雨が降ってきた。 下駄箱に行くと、一人の少女の姿。 「桃瀬先輩、どうぞ。」 2本持ってきた折り畳み傘のうち、1本を差し出す。このために俺は傘を2本入れているのだ。 「ブルー、そこは『一緒にいかがですか』って言う所じゃないの?」 「俺はテンプレをするつもりはありませんから。」 もう1本の傘をさし、さっさと歩き出す。 「もう、ブルーったらテンプレなんだから。」 口を尖らせすねる桃瀬先輩。そういう仕草は可愛いんだけどな。 変人でなければと、つくづく思う。本当に残念な美人さんである。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!