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ここは東京都のとある高層マンション。ここから見える夜景はとても綺麗でこの場所がお気に入りだった。しかし、今はなにやら考え込んだ様子で窓から夜景を眺めていた。
窓を少し開ける。そこから風が入り込み、長い黒髪が風になびいた。彼女の名前は笹木淳。職業は作家。高校のときから書き始め、すでに書籍化させ、そこそこ有名になっていた。ペンネームはリョウ。淳は静かにため息をついた。
「まーた、くだらないことで悩んでるんじゃないのか?」やれやれといった様子で部屋に入ってきたのは、淳の編集者でもあり、幼馴染でもある彼女こと神木ナツだった。赤色に近い茶髪をかきあげながらそう尋ねた。
淳は表情を変えることもなく、さらっとこう答えた。
「引越しする」
「また、唐突に...。ま、淳が引越ししたいならいいけど。どこにいくつもり?」
冷たいまなざしをナツに向けながら一言。
「愛媛」
「愛媛!?」ナツの叫び声がマンションに響いた。
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