第36話 本気で好きになりすぎた

1/9
前へ
/40ページ
次へ

第36話 本気で好きになりすぎた

 海斗の顔からは笑顔が消えていた。  物騒なことを言いながら、泣きだしそうな顔をしているのは何故?  その表情がとても辛そうで、胸が鷲掴まれたように痛くなった。 「なんで……そんなこと、するの?」  出世がしたくてライバルを蹴落としたいというのなら、理解はできる。  だけど、そうじゃないんだよね?  どうしてこのふたりなのかはわからないけれど、橋谷部長と伊勢崎副社長を蹴落とした後に、会社を潰しちゃうんだよね?  どうして?  海斗と海運の間に何があったの?  海斗は目を逸らさずにこちらを見ている。  そのまっすぐな瞳は、わたしから逃げないという誠実さと……覚悟を伝えていた。  わたしが逃げるなら仕方がないと諦める覚悟……。  そんなの、嫌だ……。  切迫する空気に呼吸がしづらくなる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1000人が本棚に入れています
本棚に追加